人間探求学:圃場に生息する動植物

生物資源管理学科1回生が人間探求学で作成したウェブページを掲載します。一回生による作文であり、科学的に正確でない箇所もある点をご容赦ください。


滋賀県立大学の圃場実験場では、施設の一つに水田がある。そこで、当記事では水田周辺に棲む動植物を通して、圃場の魅力に迫ろうと思う。

1.ホウネンエビ

半透明の生き物であるため見にくいが、中央左側に見える生き物が見えるだろうか。この生物はホウネンエビといい、甲殻類の仲間である。エビと名前にあるが、クルマエビなどの一般的なエビが属している十脚目には属さず無甲目(ホウネンエビ目)に属するため、正確にはエビではない。また、写真のように常に水中を泳いでおり、脚を水面に向けて仰向けに泳ぐというかなり変わった生き物である。ホウネンエビが現れた年は米が豊作になるという伝承があり、名前は豊年が由来である。実際、ホウネンエビは農薬などの環境の変化に弱いことから水環境の指標となり、水温25度、十分な水量などの条件で孵化するため、単なる迷信でもないのかもしれない。また、ホウネンエビが生息できる環境であるということは、他の生き物にとっても住みやすい水田ではないだろうか。

2.ヒメイワダレソウ

上述のホウネンエビのように良い兆候となる生き物もいれば、その逆の生き物もいる。ヒメイワダレソウはその代表例だろう。ヒメイワダレソウは南アフリカ原産の植物で、オーストラリアやアルゼンチンではすでに帰化して生態系に深刻な影響を与える植物として見なされている。日本でも重点対策外来種に指定されている。ヒメイワダレソウが国内外で警戒される要因として、在来種のイワダレソウとの遺伝子交雑の恐れや、断片の一部が用水路などを介して広がる恐れがあるためである

3.タイリククロスジヘビトンボ

このおおよそトンボとは思えない外見をした昆虫はクロスジヘビトンボ属のタイリククロスジヘビトンボという。実際、クロスジヘビトンボ属の仲間はトンボのような翅が2対あるが、ヘビともトンボともまた違った生物であり、どちらかというとカゲロウなどに近い。まず、トンボとの大きな相違点の一つに、完全変態(さなぎの段階があること)がある。さらに、ヘビトンボ目の大きな特徴として気性の荒さが挙げられる。成虫を手で掴もうとすると、体をくねらせ、噛んで反撃しようとしてくる。一説ではこの姿がヘビのようであることからこの名がついたとされる。凶暴なのは成虫だけではない。幼虫に噛みつかれると毒こそないものの腫れ上がるほどの威力を誇り、川ムカデの異名まである。さらに、本来動かないイメージのあるさなぎでさえ迂闊に触ると噛む。そんな幼虫から成虫まで凶暴な昆虫だが、一方で清浄な河川にしか生息できないことから、水質の指標生物としての一面もある。また、本種の近縁であるヘビトンボ属ヘビトンボは、かつては宮城県の一部で孫太郎虫として民間薬に使われていたり、長野県伊那市では珍味として食べられたり、人と共に生きてきた虫でもある。しかし、宮城県では生息地の開発により見られなくなり、今では幻の薬となってしまっている

引用文献

(1) 澤崎 裕紀 丸山 敦:ホウネンエビの卵孵化率と越冬時の土壌含水率の関係(2010)
<入手先:https://opac.ryukoku.ac.jp/iwjs0005opc/bdyview.do?bodyid=TD32107857&elmid=Body&fname=dstoyama_c_g_062.pdf&loginflg=on&once=true>
(2) 川口佳則 沖陽子:ヒメイワダレソウ(Phila canescens(Kunth)E.Greene)のわが国における逸出および問題雑草化への可能性とその対策(2014)<入手先:https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed/59/1/59_31/_pdf/-char/ja>
(3) フマキラー(2021)<入手先:https://fumakilla.jp/foryourlife/586/>

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